『日本経済新聞』(8月8日付夕刊)より一部抜粋

関西フィル定期演奏会 熱気引き出す湯浅のタクト


大阪出身の指揮者、湯浅卓雄が初めて関西フィル定期に登場した(7月19日、ザ・シンフォニーホール)。

曲目はグルックの歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲、モーツァルト「ピアノ協奏曲変ロ長調K595」、
ウォルトン「交響曲第一番」の3曲。湯浅が振ると関西フィルは非常に密度の高い響きに変ぼうした。
……中略……。
ウォルトンでは様相が一変した。輻輳(ふくそう)した長大な曲を、すみずみまで驚異的な統率力で明せきに
表現し、しかも異常なほどの熱気を噴出させた。変拍子のリズムも明快そのもので、各パートの妥当なバラン
スは、理想的といえるだろう。関西フィルを自在にドライブした一糸乱れぬアンサンブルは、精緻(せいち)
この上ない。
この密度の高い、疑集力の強い演奏は、曲を再評価させる。湯浅はイギリスを活動の本拠としているが、今回
のウォルトンは楽団の潜在能力を余すところなく引き出し、ゆたかな作品へ共感を示した。すばらしく完成度
の高い表現であった。
                        (音楽評論家 小石 忠男)